道満

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道満

「……お邪魔しました。私そろそろ帰ります」 「あら、ゆっくりお茶でも飲んで行ってくださいよ」 「いえ、用を思い出したので」 「それは残念。今度ゆっくりいらしてね」    私は神社を後にした。電車に飛び乗るとすぐにスマホを取り出した。そして文字を入力した。 『蘆屋道満(あしやどうまん)』  蘆屋道満、陰陽師である。安倍晴明のライバルとされる人物だ。  国家公務員として華々しく活躍する安倍晴明に対し、道満は市井にて庶民の病気を治したりし、信頼を集めていた。  そんな道満の噂は都にまで届いた。そして遂に帝の耳にも入り、道満は清明と勝負をすることとなる。  勝負に負けた方が勝った者の弟子になるという勝負。帝から出されたお題は「長持ちの中身を占術で当てる」というものだった。  道満は「中身はミカンです」と答えた。清明は「ネズミです」と答えた。中身はミカンだった。正解を知っている帝は清明が負けたとがっかりした。しかし蓋を開けてみるとネズミが飛び出してきた。清明はミカンをネズミに変えたのだ。
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