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私は事件のあらましをリキリキに話した。
「じゃあ蘆屋道満一族が安倍晴明一族の後継者を婿にしようと画策している、というわけなんだね」
「そうなんです!」
「で、それの何処が事件なの?」
言われてみたらそうだ。いや、でも私からしたら大事件なのだ。
「だって先輩は好きでもない人と結婚させられようとしてるんですよ。それも嘘をつかれて泣き落としされて」
「良くある話だね。恋の駆け引きっていうんだよね。それにそんな嘘を見破れないような男ならそれまでの男だよ」
「でもそんな事になったら陰陽師の跡取りがいなくなってお家断絶になっちゃうかも」
「先輩の他にも弟子はいるんでしょ? なら誰かが跡を継ぐよ」
「いや、嘘や泣き落としだけじゃなくて怪しい術を使って先輩を意のままにしようとするかも」
「先輩だって陰陽師なんでしょ? 術のかけ比べに負けるようじゃ後継者なんて無理だよ」
「……ほら、関係ない私にも式神付けるんだよ。プライバシー侵害じゃないの?」
「ああ、これね。由美には視えないんだよね」
「うん」
「じゃあいくら優秀な弁護士さんでも弁護のしようがないね」
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