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リキリキめ……口まで達者になりやがって。でもその通りだ。今の状況じゃ事件でも何でもない。せいぜい先輩に嘘をついて精神的苦痛を与えた、くらいのものだ。
「ごめんね愛ちゃん。警察なんてこんなもんなんだ。特に公安は日本を揺るがすほどの凶悪な犯罪とかテロとかじゃなきゃ動かない。でもそれが日本に悪影響を与える事件になる恐れがあるなら僕たちも動くし徹底的に調べる。そうなったら遠慮なく相談してね」
はいはい、ごもっともですよ。その通り、これは私だけの大事件。先輩が桜とくっついて困るのは私だけ。リキリキにも由美にも何の支障もない事なのだ。それを相談するなんてバカだった。
「お邪魔しました」
「え、もう帰るの?」
「だってお邪魔でしょ?」
「別に〜。リキとなんか毎日会ってるからもう何ともないよ」
「空気のような存在ってヤツ?」
「うん」
「空気なくなったら死んじゃうよ。大事にしてあげなよ」
私はキザなセリフを残し由美の部屋を出た。うん、空気は大事だ。今の私は酸欠状態。先輩という空気がなくなってしまうかもしれないという極限状態。エベレストに酸素ボンベを持たずに登った気分……。
「愛、修行よ! 今夜はエベレストよ!」
わざとか?
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