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その後何体もの遭難者と話をした。まるで野戦病院のように遭難者たちが横たわっていた。ひとりひとりに何故山に登るのかを聞き、成仏させて行った。
周辺の遭難者を全員成仏させた時、朝日が昇ってきた。
「うわ〜〜! 眩しい!」
見渡す限り山、山、山。人造物など何一つない。山と太陽のみ!
「結局全員山に登る理由はバラバラだったね」
「だね」
「そこに山があるから、なんて答えた人ひとりもいなかった」
「だね」
「答えは違うけど皆明確な理由があった」
「じゃなきゃ山になんて登らないわよ」
「だよね」
命をかけて登るのだ。それなりの理由と万全な準備なくしては登るわけがない。
この雄大な自然の中にいると自分の悩みなんて物凄くちっちゃく思える。悩む価値すらないように思える。
「それは違うよ」
マイが朝日を背に、私を見つめてそう言った。
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