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「失礼します、栗本です」
相変わらずパソコンに向かっている秘書さん……が、ふいに顔を上げた。
「誰?」
ギロリと私の後ろを睨みつけた。
「伊集院ヨハネで〜す!」
怯むことなく毛瀬はクルリと一回転し、ビシッとポーズを決め秘書さんに挨拶をした。うむ、さすがジョニーズ。褒めてつかわす。
「伊集院……ヨハネ? まさか……本物? え、そうなの? ファンです! サインください!」
マジか……。
毛瀬は得意げにサインをした。
「お名前はなんていうんですか?」
「まあ、名前まで入れてくださるの? じゃあ柳生じゅう子でお願いします」
……え? 柳生?
え? え? まさか、もしかして。私は秘書さんのデスクをチラ見した。書類にハンコが押してあった。"柳生"……。迂闊だった!
「栗本さん、社長がお待ちよ」
「そうだった!」
ウキウキと毛瀬と話をする秘書さんはもう私など眼中になかった。いや驚いた。秘書さんが毛瀬のファンとは、そして何より秘書さんが"柳生"だったとは。でも、あの"柳生"?
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