風と共に……

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風と共に……

「明日は風が強いでしょう。帽子が飛ばされないように気をつけてくださいね」  明日の天気は晴れ、時々強風。幽霊さんは風と共に去った。  毛瀬が振ったマリンステッキから一陣の風が吹き出し、そして一瞬にして幽霊さんは消えた。  指一本部屋から出ることのできなかった幽霊さんがあっという間に部屋から消えた。幽霊さんの過去を色々調べた努力が水の泡だ。  幽霊さん成仏できたのだろうか。それともただ霧散してしまっただけなのだろうか。霊視したけれど分からなかった。 「それならそれで良かったじゃない。いつまでも現世にいちゃ本人にも生きてる人間にも良くないわよ」  今日は仕事の前に事務所に寄り、師匠に毛瀬を付き人にした文句を言いに来た。 「それは分かる。分かるけど……ちゃんと成仏させてあげたかった」  物凄く心残りだ。そして……寂しい。世話を焼いてくれた事、上品な身のこなし、全てが憧れだった。女性のお手本みたいな人だった。それが挨拶もせずに突然のお別れ。寂しすぎる。
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