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心霊特番
朝から蒸し暑い、雲ひとつない快晴だった。しかしスタジオの中は南極のように寒かった。行ったことないけど。
ここはGスタジオ。年も死因もバラバラな、総勢30人の幽霊が集まっている。
今日は夏の心霊特番の顔合わせの日だ。人間の出演者は別のミーティングルームで打ち合わせをしている。幽霊たちとの打ち合わせは私が担当することになった。そりゃ他の人には視えないし話もできないから当然だ。
「皆さんお集まり頂きありがとうございます。これから名札を配りますから並んでください」
「何だそれ?」
「番組中に胸に付けてもらいます」
「姉ちゃん俺の名前知ってるんか?」
「今から伺います。そしてこのプレートに書かせてもらいます。番組中発言する機会があると思いますが、『幽霊さん』とお呼びするのも失礼かと思いますので」
「なるほどねぇ。確かに俺の名前は幽霊さんじゃねえ。親から貰った立派な名前がある」
「私実名は公表してないんです。生きてる時色々あって……」
「仮名でも構いませんよ」
「それなら良かったわ〜」
番組の中で幽霊たちにインタビューするコーナーがある。その時「そちらの幽霊さん」「あちらの幽霊さん」と呼ぶのも紛らわしい。なので名札を付けてもらう事にした。名札をぶら下げる紐は裏にお経を書いておいたので霊体を素通りできない仕様になっている。視えない人からすると宙に30個の名札が浮いているように見えるだろう。恐怖心を煽るいい演出だ。
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