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神社の夜
相変わらず毛瀬の車の中はマリンちゃんの歌が流れていた。運転席には毛瀬、助手席には先輩。そして後部座席には私と桜が仲良く座った。一見、見かけ上は。
「お父様退院されて良かったですね」
「ご心配おかけしました」
「特番では大役ですね。頑張ってください」
「愛さんも幽霊たちのお世話大変ですね」
もしここに先輩がいなかったらどんな会話をしていたことやら。
「そう言えば愛ちゃん、仮眠室の幽霊さん、部屋から出られなきゃ特番に出られないんじゃないの? 出られるようにしてあげなきゃね」
「……もう、その必要はありません」
「え? ああ、愛ちゃんが自由にしてあげたんだ」
「いえ、幽霊さんは既に成仏されました」
「そうなんだ。さすが愛ちゃん」
「私じゃなくて……」
「僕がやったんだ!」
毛瀬は得意気に親指を立てウインクをした。
「え、君が?」
「ヨハネって呼んでください」
「ああ、確か聖ヨハネ様が守護霊でしたね。そうか、ヨハネ様のお力で成仏させてあげたんですね」
「違うよ。マリンちゃんだよ」
「え? マリンちゃん……そんな聖人いたかなぁ。でも愛ちゃんは頼もしい付き人が付いて良かったね。僕だったら霊感がないから何もできないし、もし幽霊が視えたら腰を抜かしちゃうかもしれない」
ちょっと自虐的に先輩は言った。
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