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「まあ私は病み上がりでそんなに食欲もないので皆さんで召し上がってください」
「え、おじさん病み上がりなんですか?」
毛瀬の目が輝いた。
「僕に祈らせてください。実は今日お告げがあったんです。今日は病人に会う、癒やしてあげなさいって」
「え……癒やすって……。いや私はもう退院してきたので病人ではな……」
先輩が心配そうにお父さんを見つめていた。お父さんも嘘がバレるとマズいと思ったのだろう。急にふらふらと座り込んだ。
「ほら、無理しちゃいけません。布団は何処ですか? 僕の肩に捕まってください!」
何やら毛瀬が親身になってお父さんを介助し始めた。すると先輩も「僕も手伝います」と毛瀬と一緒にお父さんを介助し始めた。こうなったらされるがままになるしかない。お父さんは病人のフリをして寝室へと運ばれて行った。
「えっと……やっぱりお父様、まだ本調子じゃないようですね」
「……まあ、そうみたいです」
桜も返事のしようがなく困っていた。
「立ってるのも何なので、座りましょう。どうぞ」
桜が私に座布団をすすめたので私は座った。桜と寿司を挟んで向かい合わせで座った。……話す事がない。重苦しい沈黙が続いた。
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