通り魔事件勃発!

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 土曜日、私は神社へ向かった。この間泊めてもらったお礼とお父さんのお見舞いを兼ねて……なんてもちろん口実だ。もう一度神社を見たかった。もしも結界が弱くなっているとしたら境内の奥が見られるかもしれない。  人手の多い土曜日。私は半袖のポロシャツとジーパン、そして頭にはGのマークの入った野球帽を目深にかぶった。いかにもこれからプロ野球観戦という出で立ちだ。こんなラフな格好をしていればテレビに出ている人だとは誰も気づくまい。  電車を乗り継ぎ神社へと歩を進める。誰にも声はかけられずここまで来た。変装は大成功だ。さあ神社へゴー! と思っていた時だった。 「!」  いきなり後ろから誰かが抱きついてきた。 「な……何……するの……!」  大声を出したつもりだったが声帯が緊張してかすれた声しか出なかった。なおも強く抱きしめられ恐怖と不快感でいっぱいになった。それだけではない。私を抱きしめる誰かは、もの凄く。 「偵察に来たのか?」  男の低く囁く声が聞こえる。いや、頭に直接響いている……。 「お前は関係ない人間だ。関わるな」
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