通り魔事件勃発!

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 次の瞬間私の体は解放された。脱力した私は地面に座り込んでしまった。私は恐怖心を振り払い振り向いた。そこには誰もいなかった。気配さえもない。何処へ逃げた? ここは龍玉を出して……。 「あれ……もしかして……あ、やっぱり! お天気お姉さんだ!」  突然後ろから声をかけられた。 「あ、愛さんだ。わ〜、毎晩観てます〜」  何故か続々と人が集まってくる。何故だ、何故だ? 「これからも宜しく〜」  私は強張った顔の筋肉を無理矢理指で伸ばし笑顔を作った。そして逃げた。今視聴者さんたちの相手をしている心の余裕はない。  私は急いで電車に乗った。しかし周りから「愛ちゃんですよね?」と声を掛けられまくった。何故だ? 「アンタ背中に何付けてんのよ」  何とか視聴者さんたちをまいて事務所に駆け込んだ。私の背中を見て師匠が開口一番、笑いながらそう言った。 「何か付いてるんですか? ヤダ、取ってください!」 「なになに? ”お天気屋お姉さんの愛で〜す”だって。アハハハハ」 「私はお天気屋じゃない! 誰よ! もー!」 「アハハ……熱っ! 何これ?」 「え……?」  私の背中に貼られた紙を剥がそうとした師匠の指が真っ赤に火傷していた。
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