通り魔事件勃発!

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「留年はイヤだ〜」 「だったら演じるしかないでしょ」 「……どうせなら主役がいいな」 「もちろん! 主役は愛、あなたよ!」  主役……なんていい響きなのかしら。私が主役? 演劇経験のない私が? 上手くできるかしら。いえ、演じきってみせる! だって留年なんてイヤだも〜ん。 「すっかりなり切ってる……単純なヤツ」 「え? 何か言った?」 「ううん! 頑張れ愛! 花束は何がいい?」 「紫のバラ!」  式神はミズノコがヒョイとついばみ飲み込んだ。今頃ミズノコのお腹の中で灰になっているだろう。なんだ、式神の始末なんて簡単じゃないか。  私は帰りに古本屋へ行き、演劇少女たちのバイブルである「ガラスのお面」のマンガ本を全巻買った。これで演技力を磨くんだ。 「愛、本当の女優になるわけじゃないんだし、そんなん読んでどうするの?」  マンションに戻り一巻から読み漁っている私にパー子が呆れ顔で聞いてきた。 「分かってるわよ。でも何かに夢中になってなきゃ怖くて……」  分かってる。これはお芝居なんかじゃない。現実なのだ。でも私に役割があるのも事実だ。それは多分、道満を成仏させることなのだ。   でもどうやって?   この世に偶然なんてない。ならば私がこの本を読むのも偶然ではない。何かの役に立つはずだ。そう信じ、私は本を読み進めた。
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