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なり切ると演じ切るは違うのだろうか。
「演じ切るだと演じてる事前提じゃん？ それだと嘘や誤魔化しが入っちゃう。でもなり切るとその人の人生も思いも全て自分のものとなって自然に言葉が出てくるんだよ」
なり切る……それは演技でも憑依でもない。自分がその人になったつもり、いや、つもりじゃダメだ。その人になるのだ。同化なのだ。
「なるほど……なんか難しそう」
「慣れればどうってことないよ。コツは自信を持つことだよ」
ふむ……。慣れか。
「本番まであと1週間だね。楽しみ〜。愛ちゃんも出るの？」
「ううん。私はスタジオの隅っこで見てる」
「そうなんだ。私が口寄せする人決まってるの？」
「うん。大人しくて悪意の無さそうな人選んでおいたから。もし悪霊化しても陰陽師さんもいるし、私もいるから安心して」
「うん。じゃあ任せた」
「おう、任された」
鮪子さんは相変わらず威風堂々と両手を振って帰って行った。任されたはいいが本当に大丈夫だろうか。鮪子さんに何かあったらどうしよう。
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