心霊特番

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心霊特番

 番組開始は19時だ。しかし私はお昼に出社した。だって先輩がスタジオ入りする時間なんだもん。  私はほんの少しGスタジオの扉を開き中をを覗いた。セットは既に出来上がっていた。古民家、いや廃屋を思わせる古ぼけたセットだ。正面には床の間があり、色褪せた幽霊画の掛け軸が飾られていた。そして中央の囲炉裏を囲むように椅子が置かれている。そこにゲストたちが座るらしい。  セットの後方には客席が設置されていた。普通の番組なら観覧のお客さんが座るのだろうが、今日は違う。そこには特別ゲストの幽霊さんたちが座るのだ。でも一般の人たちには視えない。ただ名札が浮いているだけの妖しい空間になるのだ。  そのGスタジオの中央に2人の人物が既に入っていた。先輩と桜だ。2人はスタジオ内を入念にチェックし打ち合わせをしていた。そして2人は背中合わせになり印を結んだ。  2人の口から真言が流れ始める。空間が引き締まっていくのが分かる。場を浄めているのだ。  真言がスタジオの隅から隅へと伝わる。真言の触れた壁、天井、床が強化されていく。結界を張っているのだ。さすがに結界は視えないが空気感で分かる。一通り張った結界を更に頑強なものにしようと真言は続いた。何という迫力、荘厳な儀式。私は圧倒された。 「……ちょっと待って。隙間がある」  桜が真言を止めた。 「嫌だ、しっかり閉めたはずなのに扉が開いてるわ」  桜はスタスタとこちらに向かって歩いてくる。ヤバい! 私が扉を開けた事がバレてしまう! 私は急いでその場を離れた。すぐにゴンという音が聞こえ扉は固く閉ざされた。見つからずにすんだ。
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