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「念には念を入れて、人間のいる空間にもうひとつ結界を張っておいたんだよ。万が一の事を想定して」
先輩が笑顔で説明してくれた。久しぶりに見る先輩の顔。久しぶりに聞く先輩の声。懐かしさに涙が出そうだ。
「じゃあ人間は二重に護られてるってことですね。それは安心です」
話したい事はたくさんあるが、本番間近でそんな時間もない。今は特番の事だけ考えるのだ。
「これで準備は完璧よ」
自信満々に桜が言うのも納得だ。スタジオ内はもの凄く空気がいい。まるで神社にいるようだ。少し前までGの巣窟だったとは思えない。
「じゃああとは最終打ち合わせをして出番を待つだけですね」
「ええ。何か緊張してきちゃった。大和、コーヒーでも飲みに行きましょう」
「うん。じゃあ愛ちゃん、後でね」
先輩と桜は寄り添いながらスタジオを出ていった。少々の緊張感が2人の背筋を伸ばしている。美男美女の陰陽師カップル。絵になっている。
悔しい……でもここで凹んでいる場合ではない。私には幽霊たちを統括する任務があるのだ。この番組の真の守護者は私なのだ。私は最強霊能力者の役を演じるのだ。
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