本番!

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 私は幽霊さんに向かって九字を切りお経を唱え始めた。あのくらいの怨念ならすぐに消せるはずだ。 「……般若心経」  お経を唱え終え幽霊を視た。 「あれ……?」  怨念は消えていなかった。それどころか更にオーラは黒っぽくなっていた。そしてその怨念が他の幽霊たちにも伝染し始めていた。 「何で? あ……」  幽霊たちの周りには鉄壁の結界があった。私のお経など通さないほどの。 「次の映像です」  次の映像は墓地だった。ボロボロになった墓石が映し出された。そこへ若者が金槌を握り現れた。若者は躊躇することなく墓石を叩いた。そして砕け落ちた石の欠片を手にし嬉しそうに微笑んだ。 「これで大学合格できるぞ!」  その墓の主は生前大学教授で、その墓石を持っていると合格できるという噂がネットで広まっているそうだ。 「俺の墓ボロボロにしやがって!」  幽霊の1人が突然立ち上がり拳を握りしめていた。  その後も何故かゲストの幽霊に関係のある映像が流された。そのたびに幽霊は怒り、嘆き、恨み……観覧席はすっかり黒いモヤに包まれていた。
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