本番!

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「桜さんと先輩は?」 「知らない。桜さんは社長の親戚なんでしょ? だから特別室にいるみたいよ」  迂闊だった。桜は特別扱いだったのだ。普通のタレントが使う控室なんか使わないのだ。桜と話はできないとなると……あとは鮪子さんだ。 「鮪子さん、口寄せは完全ブロックでやって」 「え? どういう事?」 「どうも幽霊たち全員悪霊化しちゃったみたいなの。だから自分に降ろさないで」 「どうしてそんな事に?」 「説明してる暇はないの。とにかくそういうわけだから」  鮪子さんに霊を降ろしてはいけない。鮪子さんが乗っ取られてしまう。 「そっか、それなら仕方ないね。じゃあ今からバリアを……ウッ……!」 「鮪子さん!?」  突然鮪子さんが倒れた。慌てて近寄るが私の呼びかけにピクリとも反応しない。助けを呼ばなきゃと部屋に備え付けられていた内線電話に手を伸ばした時だった。 『その必要はない』  鮪子さんはすっくと背筋を伸ばし白目を剥いたまま立ち上がった。そして喋り始めた。  憑依されたようだ。
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