本番!

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 しわがれた声だが威厳に満ち妙に説得力のある喋り方だった。 「あなたはもしや……鮪子さんの守護霊様ですか?」 『そうです』  鮪子さんの守護霊は以前視た事がある。今鮪子さんの後ろにいるのはあの守護霊だ。確か鮪子さんの守護霊は指導的立場のイタコだ。 「その必要はないとは? 助けを呼ぶ必要がないってことですか? それとも鮪子さんにバリアを張らせる必要はないってこと?」 『この娘には既に私が取り憑いています。もう何者もこの娘には取り憑けません』  弱い霊だったら追い出される事もある。しかしこのイタコの守護霊はかなり強そうだ。 「では口寄せは守護霊様が?」 『そもそもこの娘はまだまともに口寄せをやった事はありません。今日は体験学習してもらいます』 「なるほど……でも相手はかなりの悪霊かもしれません」 『そんな事今までに何度もありました』  守護霊は自信に満ち溢れていた。 『他にも降ろしたい霊がいるのでしょう? それも私が請け負います』  華さんの事だ。半分諦めていたがこの守護霊様だったら降ろしてくれそうだ。 「では宜しくお願いします。もし必要があれば何なりとお申し付けください」  その時控室の扉が開いた。 「出番です」  鮪子さんは憑依されたままフラフラとスタジオへ向かって歩き出した。  
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