本番!

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 私は仕方なく社長の側に行った。 「これはどういう事かな? 栗本さん」  社長は興奮した目つきで私を見た。 「も、申し訳ありません!」  何故か謝罪の言葉を述べ腰を90度折り曲げ最敬礼のお辞儀をしてしまう。条件反射って怖い。 「何で栗本さんが謝るのかね? これは……これは最高じゃないか!」 「は……?」  顔を上げて社長を見ると、目を輝かせて頬を上気させていた。ん? これは怒りではなく、喜んでる!? え、何故だ!? 「心霊特番はこうじゃなきゃなあ。今年は凄くいい。去年のゴキブリの何倍もいい。素晴らしい番組になった。これはいい」  後ろで様子を見ていたディレクターさんも目を点にしていた。 「いや、これから桜の出番だから観に来たんだが、素晴らしいよ。全国のお茶の間は凍りついているだろうな、ハハハハ……っと、生放送だった。静かにしなきゃ」  この状況で笑えるとは、社長、気は確かか?
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