本番!

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「おいディレクター、次は桜の出番か?」 「いえ、イタコの出番です」  ディレクターの言葉に社長は不満そうに眉をしかめた。 「そんなのやめて桜の出番にしなさい。この状況に陰陽師が出てきて悪霊を一網打尽にするのだ。その方が視聴者も喜ぶだろう。柳生くん、すぐ桜に来るように言いなさい」 「かしこまりました」 「え……じゃあ準備します」  ディレクターは慌ててADに連絡をした。そしてADは「次は陰陽師の出番に変更」と書いたカンペをアナウンサーに示した。  確かに幽霊たちを落ち着かせる方が先かもしれない。でもその後鮪子さんの出番はどうなるの? 幽霊退治しちゃったら口寄せできなくなる。……いや、非常事態だ。そんな事言っている場合ではない。ならば桜と一緒に私も浄霊に参加しよう。 「スタジオ内は恐ろしい事態になっております! 観覧席では名札が乱舞している状態です。そして設置されているキーボードが激しく音を立てています。これは決してヤラセではありません。現実に観覧席には幽霊がいるのです!」  いつもは冷静なベテランアナウンサーも引きつった顔で必死に実況していた。女性アナウンサーはうずくまって泣いている。 「この状況を何とかできるのはあの人しかいません。陰陽師様、お願いします!」
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