本番!

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「な、名札が移動しているのが分かります! 悪霊たちが苦しんでいるようです!」  悲しきアナウンサーの(さが)か。女性アナウンサーは涙を流しながら実況中継をした。  いや、苦しんでなんかいない。幽霊たちは逃げ惑っているだけだ。あのふさふさから来る神聖な風を避けているだけだ。これじゃ何の解決にもならない。 「どうですか陰陽師様、悪霊は鎮まりましたか?」  アナウンサーの問に桜は大幣を振るのをやめ、首を小さく横に振った。シャランと冠の飾りが揺れる音がした。 「かなり手強い相手。これは本気を出さなければなりません」  桜は先輩に大幣を渡した。そして両の手を組みカッと目を見開いた。 「※※※※!」  桜は真言を唱え始めた。真言は観覧席の結界に突き刺さって行く。そして真言の効果なのか結界が黒紫に変化した。 「今観覧席に結界を張りました」  桜はさらっと言った。このタヌキめ。 「今から結界を縮めて悪霊どもを一網打尽にしましょう」  桜は再び真言を唱え始めた。桜の言う通り結界が見る見る狭まっていく。結界内から阿鼻叫喚が聞こえてくる。ダメだ。そんな事しちゃダメだ。よし、私が……!
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