本番!

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 ズイと前へ一歩進……もうとすると後ろから誰かが私の服を引っ張った。振り返るとそこには秘書さんがいた。 「あなたはこちら」 「え?」 「いいから来なさい」 「ダメです。私が助けなきゃ幽霊さんたちが!」 「見てみなさい」  スタジオ内を見た。すると桜が出てきた床の間から鮪子さんが! 「陰陽師殿、しばし待たれよ」  白目を剝いたままフラリと鮪子さんが登場した。鮪子さんなのに圧倒的な存在感と威厳。桜は物も言えず固まっていた。 「どれ……キェーーー!!」  突然鮪子さんが奇声を発した。次の瞬間突然床に倒れ込んだ。さすがのアナウンサーも実況できないほど狼狽えていた。と、鮪子さんはムクリと上半身を起こした。 「私は……一文字(いちもんじ)文子(ふみこ)と申します……」  あれほど威厳に満ちていた鮪子さんが急にモジモジし始めた。モジモジお婆さんが降りたのだ! 「なんと! イタコに霊が降りたようです! あなたはこの観覧席にいる霊ですか?」  アナウンサーが職業意識を取り戻しインタビューを始めた。 「はい。タイプライターを打ってます」 「タイプライター……キーボードの事ですか?」 「今はそう呼んでるみたいですね。古い人間なもので……申し訳ありません」  鮪子さんは申し訳なさそうにモジモジした。
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