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「ではあの文字はあなたが入力したのですか?」
「はい。お恥ずかしゅうございます」
「何かこの世に恨みがおありなのですか?」
「はぁ? 全く」
「では何故あのような文字を?」
「他の方の思いを文字にしただけでございます」
「では一文字さんは何故成仏されないんですか?」
「私は……」
モジモジお婆さん、もとい一文字さんは自分の思いを語り始めた。自分は電報局に勤めていた。それが戦争になると軍の手伝いをさせられ暗号文を打たせられた。暗号なので意味は分からなかったが言われるまま打っていた。しかしそれが敵国への攻撃命令だと知り、自分の電文で何人もの人が死んだ事を知った。
「いくら敵国とはいえ罪のない人たちが攻撃されるなんて……戦いたい人だけが集って戦えばいいじゃないですか。あんな時代はまっぴらです。ですのでどうか皆さま、平和な世の中を……」
スタジオは感動に包まれた。その通りだ。罪のない幽霊さんたちを一網打尽にするなんて平和的ではない。ちゃんと納得して成仏してもらいたい。やはり私が!
「湿っぽくなってしまったな。これでは心霊番組ではない。恐怖だ、恐怖が必要だ! イタコをつまみ出せ!」
社長がディレクターに命令した。
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