本番!

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「確かに、私の術では成仏はさせられません。でも封印する事はできます」 「封印は解かれる恐れがあります。そしてまた表に出て暴れる事もあるでしょう」  お茶の間の視聴者さんの期待は私に集まっているはずだ。 「ふふ……」  桜は不敵な笑みを漏らした。 「悪霊といっても元は人間。それもこの霊は同情すべき理由をお持ちです。それを強制的にあの世へ送るんですか? それとも霧散させてしまうんですか? お可哀想に」  桜は涙をこぼした。カメラさんも桜をアップにした。 「私はこの霊を封印し、毎日祈りを捧げましょう。その祈りが届いた時、悪霊も心を入れ替えるでしょう」 「そんな不確かな事危険すぎます」 「いえ、きちんとお祀りすれば必ず悪霊も善霊となります。菅原道真公しかり」  確かに恨みを残してこの世を去り、一時は祟り神と恐れられた。しかし今や学問の神様。参拝者は後を絶たない。菅原道真公だけではない。かつて祟り神だった霊を祀り人々の尊敬を集めている神社はたくさんある。 「悪霊だからさっさと片付けてしまおうなんて、可哀想ではありませんか? 反省し改心する機会を与えてあげる事も大切なんじゃないでしょうか。それが日本の心ではないでしょうか」  お茶の間の視聴者さんが桜の言葉に同意しているのが分かる。そして私も納得してしまっている。それもありかもしれない。それが陰陽師流、神道流の”成仏”のさせ方ならそれでも良いのかもしれない。
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