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「憎いなら、どうしたいんですか?」
「……道満が、道満が俺を育ててくれた。清明の子だと知りながら」
「素晴らしい方だったんですね」
「……」
何故か黙り込む鮪子さん。いや話をしようとしているが何者かに邪魔をされているように藻掻いている。
「桜、封印して!」
「え?」
「何でもいいから取り敢えず封印して!」
私は桜に指示した。最初からそのつもりだった桜はすんなり頷くと懐から鏡を取り出し真言を唱え始めた。
「※※※※……!」
鮪子さんから黒いモヤが抜け出した。そしてモヤは鏡に吸い込まれた。
「封印完了しました。これは私が持ち帰って丁重に……」
「ちょっと待って下さい。イタコ様」
私は鮪子さんに視線を送った。
「イタコさん、あなたはさっき霊の思いを口にしようとした。しかししなかった。何故ですか?」
鮪子さんはホロリと涙をこぼした。
「はい。この霊は確かに清明を憎んでいました。でもそれは愛情の裏返しです」
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