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「え……え? 僕? いや僕は……」
あたふたする先輩。でも後ろの白狐様が大きな尻尾を振っている。
「清明の血を引く陰陽師殿、抱いてあげて下さい。父親に恋い焦がれ悪霊にまでなってしまった哀れな魂を」
先輩は両手を差し出した。覚悟を決めたようだ。
「桜さん、その鏡をこちらへ」
輝く笑顔で先輩は桜に言った。さあ我が子をこの腕に、と言わんばかりの笑顔だ。
悪魔に口を押さえられている社長が何か言おうと必死で藻掻いていた。しかしそんなの無視だ。
「大和……」
桜は先輩に鏡を渡した。そして先輩は愛情を込めて抱きしめた。
「いったいどういう状況なんでしょうか?」
アナウンサーが困惑した表情で聞いてきた。
「今鏡に封印されている道満、いえ清明の息子は父である清明に抱きしめられているのです。満足そうに涙を流しておられます。ですよね、陰陽師殿」
「え? えっと……はい」
先輩は自分にカメラが向いている事に気づき固まっていた。視えてないのだから先輩にだって状況は分からない。緊張している先輩も可愛い……おっと、お面が外れるところだった。
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