本番!

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「いやあ、付き合ってもいないのに結婚なんて、順番が違いますよ」  先輩が否定するでもなくそう言った。なんか照れてる。……満更でもなさそうな……。え、嘘でしょ? 「今の時代順番なんてあってないものだよ。何なら先に子どもを作るっていうのもありだよ」  先輩の反応に社長はご満悦だ。桜もぽっと頬を桜色に染めた。何なんだ、どうしちゃったの? 先輩!?  私のお面がボロボロと砕けていくのが分かった。私は僧侶なんかじゃない。ただのひとりの女の子なのだ。私の目の前で繰り広げられる茶番劇を平気で見ろと言われても無理だ。  呆然と立ち尽くしている私の肩を叩いたのは光だった。 「愛。愛にはまだやるべき事があるだろ」  光は観覧席に視線を向けた。そうだ。私には幽霊たちを解放してあげる使命があったのだ。 「そうよ。みんな愛ちゃんの助けを待ってるわよ」  セイラも側に来てくれた。 「何なら僕のステッキで……」 「絶対ダメだからね!」  毛瀬を怒鳴りつけたらほんのちょっとだけ立ち直った。
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