本番!

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「だな。この世にいたっておっかねえ姉ちゃんに閉じ込められる事だってあるんだ。さっさと成仏するに越したことないな」 「ほんとほんと。死んでまで苦しめられるんならサッサと成仏した方がマシよね」  他の幽霊さんたちの話は先輩や社長には聞こえないが桜には聞こえている。せっかく先輩がその気になって浮かれ気分だった桜も苦虫を噛み潰したような顔で眉を釣り上げていた。 「では全員成仏でよろしいんですか?」 「お願いします!」  みんなの声がひとつに重なった。滅茶苦茶な番組だったけど、幽霊たちのためには良かったようだ。それだけが救いだ。 「では……」  私は目を閉じ合掌し、お経を唱え始めた。と言ってもソラで唱えられるのは般若心経しかない。もっと勉強をしておけば良かったと後悔している。でも真心を込め、成仏を祈った。仏様にお願いした。  ありがとう、ありがとうという声が聞こえた。1人、また1人と消えて行くのが分かった。テレビ局のずっと上の方から暖かい光が射しているのが分かる。みんな昇って行っている。 「愛さん、お世話になりました。楽しかったです……」  最後にフロイトさんの声が聞こえた。もう誰の気配もない。目を開けた。床の上には名札が転がっていた。みんな上がったのだ。
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