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「今となっては好きだったのかも覚えていません」
「えー、じゃあ何で付き合っちゃったんですか?」
「まあ押しに弱かったっていうのもありましたが、この人は私が側にいなければダメだ、私が面倒をみてあげなきゃって思ってしまったんです」
華さんは優しくて世話好きだから甘えん坊の餌食にされてしまったのだろう。
「でもさすがの私も別れを決意しました。既に奥さんもいるし、家にはお手伝いさんもいるし。私がお世話しなくてもしてくれる人はたくさんいますから。それに私には全力で世話をしなければならない子どもがいたので、あの人の面倒もみきれなくなったんです」
いい大人の面倒をみている暇はない。子どもが第一だ。そう気付いた華さんは元社長に別れを告げ女優業を頑張る決意をした。
が、元社長は華さんと子どもを手元に置きたくて邪魔をし始めた。週刊誌に華さんがシングルマザーだと密告したのも元社長だ。あらゆるテレビ局や制作会社に手を回し、華さんに仕事をできなくさせた。
「女優がダメなら何でもしようと食堂とか工場とかにもお願いして歩きました。でも全て断られました。あの人の仕業です。挙句の果てにマンションも売りに出され住むところもなくなりました。このままじゃ子どもが可哀想だと、泣く泣くあの人に子どもを託しました」
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