真相

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「もしかして満義に洗礼受けさせたのか?」 「ええ。産まれてすぐに」 「だからか。うちの神様はとても排他的で嫉妬深いんだ。満義を異教徒と認識して攻撃しているのかもしれない」 「なんですって!? でもそれなら何故悪魔なんですか?」 「俺が知るわけないだろう。とにかく夜になると満義の部屋の家具がガタガタ揺れたり電気が点いたり消えたりするんだ。昨夜なんか満義の首が180度回っていきなり外国語を喋り始めたんだ!」  華さんはその話を信じ、自分が悪魔祓いをしようと決意した。 「それ絶対嘘ですよ! それ有名な悪魔祓い映画のワンシーンです!」 「当時修道院にいた私は映画なんて観なかったし、世俗でどんな映画が流行っているのかも知りませんでした」  華さんは騙されたのだ。そこまでして元社長は華さんを近くに置きたかったのだ。  そして連れてこられたのはテレビ局だった。さすがに奥さんの手前家には連れては行けなかったようだ。 「寄りを戻してくれと懇願されました。そこで嘘だと気づきました。帰ろうとする私をあの人は閉じ込めたのです」 「もしかして……仮眠室(ここ)?」 「はい」  毎日仕事が終わると元社長は華さんの元へと通って来た。しかしその都度華さんは拒絶した。そんな日が何日も続き元社長が家に帰るのは毎晩深夜だった。  奥さんが不審に思わないわけがない。浮気しているのかもと疑った奥さんは毎日テレビ局に迎えに来るようになった。それも息子を連れて。元社長は家に帰らないわけにいかなくなった。そして何日も華さんは閉じ込められたまま、放っておかれた……。
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