死後の世界

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「前にも少し話したと思うけど、愛覚えてる?」 「あの世には天国も地獄もない、自分の好きな階層に行ける、だよね?」  心の優しい人は優しい人だけがいる階層へ、乱暴者は暴力のはびこる階層へ。全ての魂は自分が居心地の良い場所、すなわち天国へ行ける。優しい人にとって暴力のはびこる階層は地獄、乱暴者にとって優しい人のいる階層は地獄。それだけの事らしい。 「まあそこに行くにも生前の罪を償う必要がある。すぐに天国に行ける人もいれば、何年、何十年、それ以上償いをしなきゃいけない場合もあるけどね」 「じゃあ針山とか血の池とか鬼に切り刻まれるとかは……ないのか?」  オジサンが震える声で聞いてきた。 「ない。それは罪を犯せば地獄に落ちる、だから悪い事はするなっていう犯罪予防策。そもそも針山地獄とか血の池地獄なんて作る意味がない。人はそんな事で反省したり回心したりしない。暴力から愛は生まれない」  確かに鬼に切り刻まれたら「痛い〜」「助けて〜」としか思わない。決して「自分の犯した罪のせいで今苦しみを受けています。甘んじてこの苦痛を受けましょう」なんて誰も思わないだろう。
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