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「じゃあ罪の償いのために落とされる所って?」
「沼よ」
「沼?」
「真っ暗で誰もいない、延々と続く沼よ。深くて首まで泥水のある沼。だから寝る事はおろか疲れても座る事もできない。ひたすら歩き続けなければならない。何十年、何百年、罪によってはそれ以上」
いつ終わるとも分からない沼をたった1人歩き続けなければならない。一生分の後悔や反省をしても有り余る時間。罪を犯すのは一瞬でも償いに要する時間はその何倍にもなるのだ。
「俺はどのくらい沼を歩かなきゃいけないんだ? だったらやっぱり成仏するのはやめようかな……」
オジサンは涙声で聞いた。
「オジサン何をしたの?」
「息子の嫁が風呂に入ってるのを覗いた。それは大目に見てもらえた。だが孫娘の風呂を覗いたら速攻追い出された」
何やってんねん、スケベオヤジ!
「今告白した事で少しは罪は減免されました」
「本当か!?」
「はい。ただその後、幽霊になってから犯した罪も加算されてますから」
「え! 生きてる時の罪だけじゃないのか?」
「この世にいるんですから生きてようと幽霊だろうと罪は罪です」
だからさっさと成仏しておけば良かったのに。
「分かった、これ以上罪を重ねる前に成仏するよ。さあ、成仏させてくれ!」
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