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やっとその気になってくれたようだ。毎日乙女の寝室を覗くなんて重罪だ。とっとと成仏するがいい。
「じゃあ行きますね」
「お、おう。頼む」
私は般若心経を唱え始めた。すると上から光が降りてきた。その光の中から老婆が現れた。
「全くのんびり屋なんだから!」
「母ちゃん!」
オジサンの母親が迎えに来てくれたようだ。
オジサンは窓ガラスからハラリと剥げ落ちた。そしてひらひらと上昇気流に乗って上へと上がって行った。
「短い間だったが楽しかったよ。ありがとう」
お経を唱え終わる頃には何の気配もなくなった。オジサンは成仏したようだ。
「良かった……って、あれ? オジサンは先輩に封印されてたはずなのに、簡単に成仏しちゃった。先輩の封印ってそんなに弱かったの?」
「違うわよ。先輩は成仏したくなったら解けるように封印をしたの。優しいわね」
そうなんだ。先輩そんな技を使えたとは。さすがだ。
「やっと成仏できたんだね。これで暫く沼にはまって天国に行くんだね」
「うん。まあそんな大した事してないからすぐに天国に行けるわよ」
「そっか。なら良かった」
ウザいスケベオヤジだったがいなくなるとちょっと寂しい……かもしれないような気がしないでもない。
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