約束

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約束

 先輩にメールを送った。「護符をお願いしたいです」と。  こんな口実がなければメールも送れなくなってしまった。前は気軽にメールしていたのに。  するとすぐに電話が掛かってきた。先輩からだ! 「もしもし!」 『もしもし愛ちゃん? 護符ってどうしたの?』 「はい、それが……」 『え! オジサンの霊が暴れてる? 封印が解けちゃったのかな。うん分かった。すぐに行くよ』 「え? 私そんな事言って……」  電話の向こうで先輩と桜が言い争っているのが聞こえる。「私も行きます!」「いや、あの霊は桜を恨んでいるから行かない方がいい」「でも私が確認しなきゃ」「愛ちゃんが視えるから大丈夫だよ」  どうやら桜は先輩について行きたい、でも先輩は1人で行きたい。そんな感じだった。 『え! 神社の娘を道連れにしてやるって言ってるの? うん、やっぱり桜さんは残っていて。危ないから。って事で僕1人で行くけど大丈夫だよね』 「はい! お願いします!」  何だろうこれは。夫が妻に嘘をついて愛人の元へと出掛けて行く……。そんなシチュエーション。    違う! 私は愛人なんかじゃない! そもそも先輩と桜は夫婦じゃない! 「男は情にほだされ易いんだーー」  オジサンの言葉が頭をよぎる。先輩が情にほだされる前に私がほだしてみせる! よし、頑張ろう。取り敢えず先輩が来るまでに部屋を片付けよう……。
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