約束

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 1時間後、インターホンが鳴った。 「どうぞ……」  ドアを開けるとそこには懐かしい先輩の顔が……って、そんなに長い間会っていなかったわけではない。でも、何だか遠くに行ってしまったような、今までの事は幻だったかのような感覚に襲われていた。今目の前には先輩がいる。本当に目の前に。 「久しぶり」  わおっ。先輩も同じ感覚だったみたいだ。 「この間会ったばかりじゃないですか」 「あ、そうだね。でも何だか……そんな感じがしちゃってた」  先輩と目を合わせるとお互いにクスクス笑い出した。 「むさ苦しい所ですが、上がってください」 「お邪魔します」  先輩に座ってもらって私はコーヒーの用意をした。インスタントじゃないドリップするコーヒーだ。 「いい匂い。コーヒーも久しぶりだな」 「え? 飲んでないんですか?」 「桜さんの家はお茶ばっかりで」 「そうなんですか……」  あれからずっと先輩は神社にいるみたいだ。毎日桜と生活をしているのか。すっかり負け犬気分だ。でも私の所に来ればコーヒーが飲めるんだよ、お望みならば何杯でも淹れてあげます! 声高に叫びたかった。
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