約束

4/8
前へ
/468ページ
次へ
 陰陽師は優秀だった。地の主を封印し怨霊を退治した。そして地の主を封印した鏡を御神体として禁足地ではない安全な場所に新たに神社を建てた。それが桜の住む神社だ。 「地の主がいなくなったといっても禁足地。そこで命を落とした人の恨みや悲しみは染み付いている。簡単には綺麗にならない。だからあそこには家は建てないようにと陰陽師は言ったそうなんだ。でも土地を遊ばせておくだけだと固定資産税ばかりかかって損しかない。それで桜さんのご先祖様がテレビ局を建てたんだ」  確かにあれだけの土地、マンションでも建てれば大儲けできそうだが、建てたところで幽霊騒ぎが起きれば誰も住まなくなり、結局は建て損になる。だったら人の住まない建物を建てるのが得策だ。 「地元のラジオ局から始まって今や全国放送するテレビ局にまでなった。経営能力が優れていたのか、それとも……」 「それとも……?」  まさか局を発展させるために地の主に捧げ物を、なんて事ないよね……。 「関わるとこちらも火の粉をかぶる危険があるからと歴代陰陽師は関わらないようにしてきた。でも先々代の陰陽師、ひいお祖父さんが解決に向けて動いたんだ」 「先輩のひいお祖父さんって、私たちの高校に術を掛けたって方ですよね」  私と先輩の出会った場所、私たちの母校は霊的にしっかり守られていた。その術を施したのは先輩のひいお祖父さんだった。
/468ページ

最初のコメントを投稿しよう!

215人が本棚に入れています
本棚に追加