約束

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 先輩は私の涙を優しく拭ってくれた。何で泣いてるのかも聞かなかった。先輩は私の思いに気付いているのだろうか。 「愛ちゃん、初詣行こうね」  声が上手く出なくて返事ができなかった。 「それまでに解決させるから」  私はただ頷いた。 「僕は視えない。でも清明の血を引いている。ひいお祖父さんみたいにはなれなくても立派な陰陽師になってみせる。 本当は自信なんてまるっきりなかったんだ。でも愛ちゃんがお天気キャスターになったのを見て僕も頑張ろうと思った。愛ちゃんみたいに僕も頑張ろうって。 だからそれまで待っててもらえると嬉しい。僕が愛ちゃんに追いつくまで」 「……追いつくなんて。私が頑張れたのは先輩がいてくれたからです」 「僕なんてなんにも出来ないよ」 「そんな事ありません! 先輩がいたから……先輩がいたから……」  ふわっと石鹸の香りがした。そしてぬくもり。先輩は私を抱きしめてくれていた。  私も先輩にしがみついた。言葉はないけどお互いの気持ちが混ざり合っていくのが分かる。この上ない安心感。雲の上にいるような浮遊感。目の前がピンクに染まった。 「愛ちゃん……」  先輩は少し体を離し私の目を見つめた。そしてそっと瞳を閉じた。私も目を閉じた。再び石鹸の香りが近付いてくる……。
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