約束

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RRRRR……! RRRRR!!  誰だ! こんないい時に! 「桜さんだ……」  そうでしょうともよ。先輩は照れくさそうな顔をしてスマホに出た。 「うん、うん。もう終わった。今から帰ります。はい」  メチャクチャ残念でメチャクチャ恥ずかしい。でも私も先輩もそれを表に出さず居住まいを正した。 「えっと、じゃあ帰るね」 「……はい」  帰る……帰るという言葉に物凄く引っ掛かった。自分の家じゃないのに「帰る」なんて普通言わない。せっかくの夢心地も霧のように消え失せた。  先輩を玄関まで送った。何で桜から電話があっただけでそんなに慌てて帰るの? 聞きたかったけど聞けなかった。ああ、トラピスト星人だったら良かったのにとつくづく思う。 「またね」 「はい」  先輩は出て行った。呆然と閉まったドアを見つめていた。 「あ〜あ、もう少しだったのになぁ」 「!!」  振り向くとそこにはオヤジがいた! 「な、何で!? 成仏したんじゃないの?」 「ああ、お陰様で。これから極楽へ行くから挨拶に寄ったんだ」 「あ……四十九日」 「おう。姉ちゃんには世話になったから、もう1つだけアドバイスしてやる」 「は?」 「信じる者は救われる、だ。突き進め。じゃあな……」 「オジサン、オジサーン……」  オジサンは上へと昇って行った。窓ガラスにはただ護符が貼られていた。 「あ!! 護符!!」  先輩に護符を書いて貰うのを忘れていた。追いかければ追いつくかな???
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