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「特番はお疲れ様だったね」
「え……いえ、大分予定と違う進行になってしまい申し訳ありませんでした」
「いや、心霊特番はその方が面白いからいいんだ」
てっきり怒られるものだとばかり思っていたので気が抜けてしまった。そして社長を見ると、何やら物憂げな表情だった。
「今日はお願いがあるんだ」
「はい、何でしょうか」
「あの……イタコだが、個人的に会いたいんだ」
「え」
まさか鮪子さんに、恋……?
「女優の霊を降ろしていただろ……鳳華という……」
社長、お母さんに会いたいんだ。
「すぐに連絡取ってみます。会えそうな日時が分かったらすぐにお伝えします」
「宜しく頼むよ」
今日の用事はそれだけだった。私はすぐに退室した。
「あら、早かったわね」
「はい今日は。あ、社長から頼まれた事があるので、その結果は秘書さんに連絡しますね」
「分かりました」
秘書さんは私の胸元をじっと見た。そしてニヤッと笑った。
「いいお守り持ってるわね。大事にしなさいよ」
秘書さんにはお見通しだったのだ。先輩の書いた護符くらい簡単に分かってしまう。
「はい!」
私は元気良く社長室を出た。秘書さんに応援してもらっているような、そんな気分だった。
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