ホンボシ

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「う……しかしこれは盗聴なのか? 盗撮なのか? 呪いで殺人を犯しても罪には問われない。それに比べればこの程度の事は」 「班長、確かに罪には問われないかもしれません。しかし相手は優秀な霊能力者。それにバックには悪霊がいます。もし恨みを買ったら……」 「呪いじゃ犯罪に問われない……」  霊的事件で一番恐ろしいのはそこだ。たとえ相手を殺めても法的に罪には問われない。霊的能力の高さが勝負だ。そしてこちらの一番の弱点は警察だということだ。いくら霊的な争いだとしても一般市民に危害を加えるわけにはいかない。例え犯罪者だとしても。 「愛ちゃん、忘れてもらっちゃ困る。ここはただの警察じゃない。警察庁、公安だ。テロ対策のプロだ」  テロ……。確かに生贄を捧げるために誰彼かまわず死に至らしめる事はテロ行為なのかもしれない。ならば桜や社長はテロリスト? そして今そのテロリストの巣に先輩はいる。このままじゃ先輩もテロ組織の一員とみなされてしまう。 「テロ対策というと具体的に何をするんですか?」 「先ずは情報収集と証拠集めだな」 「それを私がするんですか?」 「まさか。民間人の愛ちゃんに丸投げする気はないから安心して。ちゃんと計画は立ててあるから」 「計画って……?」 「それは言えない。極秘中の極秘だからね」  馴れ馴れしいと思っていた班長が冷たく厳しい目で口だけ笑って見せた。そうだ。オカルト専門とはいえ班長を任されるだけの人間なのだ。初めて班長の本性を見た気がして背筋が凍った。
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