ホンボシ

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「やってみる」 『うん、頑張ってね〜』  前に死んだら全てが分かるとマイが言っていた。ならば華さんは全てを思い出したはずだ。どうして自分が死んだのか、どうして仮眠室に縛り付けられていたのかを。 「マイ、私やってみる」 「うん、頑張ってね〜」 「協力してくれるでしょ?」 「私が協力する事なんて何もない。愛は1人で出来るから」 「そ、そうか。うん、じゃあやってみるよ」  私はお風呂に入り身を清め冷水シャワーを浴びた。東京じゃ滝行出来る所もないのでシャワーで代用だ。  お風呂から上がると私は香を焚き部屋を浄化した。部屋に不浄があるわけではないが、自分を落ち着かせるためだ。  幽霊には何人にも会ったし話もした。なんなら一緒の部屋で過ごした。でも成仏してから戻ってくる幽霊とは会った事がない。それで良いのだ。成仏したらあの世で修行に励み次の生まれ変わりに備える。古い記憶など忘れて前に進むのみ。  しかし遺された人間は思いがいっぱいなのだ。伝えたかった事、聞きたかった事。だからイタコや心霊鑑定の商売は成り立つ。 (せっかく成仏したのにごめんなさい)  私はスマホで華さんの画像を表示させた。キラキラしたかんざしを刺し色鮮やかな着物を着ていた。 (華さん、話しを聞かせてください……)
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