ホンボシ

11/15
前へ
/468ページ
次へ
 華さんを思い浮かべながらしばし黙想していると、芳しい香りが漂ってきた。白檀、そしてほのかな丁字の香り。  目を開けるとそこには上品な笑顔があった。 「お久しぶりです。愛さん」 「華さん!」  以前のままの優しい声に安心した。 「すみません、せっかく成仏したのに」 「いいえ、先日は愛さんのお陰で息子にも会えました。ありがとうございました」 「私は何もしてません」 「いえ、愛さんが取り持ってくれたお陰です。それに私も愛さんにお願いがあります」 「お願い?」  華さんは目を伏せ悲しそうな顔をした。 「息子が私の仇討ちなんて事を言っていたので、それを止めて頂きたいのです」 「イタコの鮪子さんから聞きました。どういう事なんですか?」 「あの人の嘘を息子は信じているのです」 「嘘……」  華さんは悔しそうに唇を噛み締め、話し始めた。
/468ページ

最初のコメントを投稿しよう!

215人が本棚に入れています
本棚に追加