決戦の金曜日

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 静まり返った境内。さっきまでの喧騒が嘘のよう……。 「えい! えいっ! 寄るな! えいっ!」  霊の存在が分からない毛瀬だけがステッキを振っていた。 「もういいよヨハネ。みんな消えた」 「え、そうなんだ。やっぱマリンステッキ最強だな」  激しく上下させる毛瀬の肩を光が優しく撫でる。光のオーラが毛瀬を包む。毛瀬を癒やしてあげているのだ。 「あとは本体だけだな」 「うん」  私は本殿の中に意識を集中させ霊視に挑戦した。前回は鉄壁の結界で中は確認できなかった。でも今は本殿の中の様子が丸わかりだ。  正面に技工の凝らされた木彫りの台に安置された御神体の鏡があった。不浄さは微塵も感じない。さすが陰陽師様の仕事だ。  しかし、その代わり特に清浄というわけでもなかった。華さんの話だと御神体には式神が入っていて浄化をしてくれていると言っていた。でもそんな雰囲気は殆どなかった。電池が終わる寸前で動きが微弱になった電動歯ブラシみたいな感じだ。式神の効力が弱くなってきているのだろうか。
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