決戦の金曜日

18/21
前へ
/468ページ
次へ
「当然合格したよ。だって東大よりずっと簡単だったから。でも親にバレて僕は勘当された。もう帰って来るな、顔も見たくないと言われた。そう言われて悲しい、なんてこれっぽっちも思わなかった。僕は自由になったんだ。これからは好きな事ができる! 何でもできる!」 (なんという我儘息子! 私とは正反対の生き方じゃないか。私は親の後始末ばかりやらされ、我慢を強いられ、やりたい事の1つも出来なかったのだぞ!)  今にも爆発しそうに満明は眉間にシワを寄せた。禍々オーラが増幅してきた。これはヤバい。 「も、毛瀬。もうやめて……」 「自由ってのはさ、結構大変なんだよね。今までは親にご飯を作ってもらって掃除や洗濯もしてもらって、勉強だけしてれば良かった。でも自由になったら自分で全部しなきゃならなくなっちゃった。 学費も出してもらえなかったから奨学金で大学に行ってるんだ。これから何10年もかけて返さなきゃいけないんだ。でも僕は頑張る。自分で選んだ道が例え石ころだらけの砂利道だとしても、熊や蛇が出てきても、僕は踊りながら進むよ。怪我をしても死んでも自分の責任なんだ。自由に責任は付き物だからね」  覚悟を決めてこの道を選んだのか。なんか毛瀬がカッコよく見えてきた。 (なるほど。親元にいれば楽に過ごせるのにわざわざ茨の道を選んだというのか。私もそうしたかった。全てを捨てて自分の好きな生き方がしたかった。でもしなかった。私には1人で生きていく勇気が無かったのだ……)
/468ページ

最初のコメントを投稿しよう!

216人が本棚に入れています
本棚に追加