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「お兄ちゃん……」
パー子の涙がキュ〜ちゃんの頬にポトリと落ちた。でも何の反応もない。
「嘘……」
足が震えた。体が固まって動けない。何とかしなきゃ。でも救急車を呼んで良いものか。病院に行けば治る? 何か、何か効果のある祈祷はないの? お経は? ……分からない。何も分からない。
「どうしたの? 何が起きてるの?」
毛瀬はわけが分からずみんなに聞いた。セイラがそっと毛瀬に耳打ちした。
「キュ〜ちゃんが? キュ〜ちゃんは何処? 僕が癒やす! キュ〜ちゃんの手は何処? 僕が祈れば絶対助かるから!」
毛瀬は地面を這いずり回りキュ〜ちゃんを探した。光が毛瀬をキュ〜ちゃんの側へ連れていきキュ〜ちゃんの手を毛瀬の手に乗せた。
「主なる神、父なる神よ。キュ〜ちゃんを救い給え……」
毛瀬は祈り始めた。視えないながらもキュ〜ちゃんの手を握りしめ必死で祈った。
しかし、何も起こらなかった。天使様も後方で羽根を休め、ただ毛瀬を見つめているだけだった。
「何で、何で助けてくたさらないんですか? 天使様、私からもお願いします。キュ〜ちゃんを助けてください……!」
私は天使様の前に跪き地面にひれ伏してお願いした。でも天使様は黙ったままだった。
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