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 妖は助けられないというのか。人食い河童は助ける価値はないというのか。違う、キュ〜ちゃんはそんなんじゃない。キュ〜ちゃんは私の大事な眷属だ。いや、家族なんだ。 「お願いします、お願いします……」  地面に私の涙が吸い込まれていく。流しても流してもにべもなく吸い込まれていく。キュ〜ちゃんを癒せるなら体中の水分を流してもいい。私の涙でキュ〜ちゃんが助かるならプールよりも湖よりも、もっとたくさん流してあげる。キュ〜ちゃん……。 「あれ? みんなどうしたの?」  空気を読めないお気楽な声が聞こえてきた。この声は、この声は……。 「先輩〜〜!」  振り向くとそこにはいつもの笑顔があった。やっぱり困った時には必ず来てくれる。何かあったら呼ばなくても来てくれる。私の救世主、私の守り神、私の……一番頼りにしている人。 「どうしたの? 何で座り込んでるの? 転んじゃったの?」  すぐに走り寄り先輩も一緒に座り込んでくれた。 「先輩……キュ〜ちゃんが、キュ〜ちゃんが、キュ〜ちゃんが……」 「キュ〜ちゃんが満明の妖魔退散の護符にミイラにされて瀕死の重症なんだ」  気が動転して上手く喋れない私に変わって光が説明してくれた。
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