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「妖魔退散! 護符はまだ付いてるんですか?」 「いや、満明が成仏した途端消えた。でもキュ〜ちゃんは虫の息だ」 「成仏……。そうですか。成仏できたんですね」  先輩は感慨深そうにそっと手を合わせた。 「で、キュ〜ちゃんは何処ですか?」  私がキュ〜ちゃんを指差すと先輩はその方向を向き印を結んだ。 「…………」  聞こえるか聞こえないかくらいの小さな声でブツブツと真言を唱え始める先輩。先輩から柔らかくて温かなパワーがキュ〜ちゃんへと注がれていく。  一瞬、ピクッとキュ〜ちゃんの体が跳ねた。 「お兄ちゃん!?」  キュ〜ちゃんの体が光り始めた。光が強くなるとともにキュ〜ちゃんの体は透けて行く。何が起きているのだ? 「お兄ちゃん、お兄ちゃん!」  腕の中で光を放ちつつ消えていくキュ〜ちゃんにパー子は不安そうに声を掛け続ける。毛瀬も何かを感じているのか、消えつつあるキュ〜ちゃんの手を黙って握りしめている。  私はただ先輩を信じている。先輩が失敗するわけがない。先輩はきっとキュ〜ちゃんを救ってくれる。キュ〜ちゃん、頑張れ……!
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