新しい神様

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「永久に働いてくれるわけじゃないんだ。そろそろ式神も寿命らしい。ほら、高校の校庭から見えた時計みたいに」  高校のオカルト研究部での先輩の最後の仕事。それが高速逆回転する時計の謎を暴く! だった。  校庭から見える管理棟の外壁に設置された大きな時計。学校のシンボル的存在で生徒たちみんなから親しまれてきた。その時計がある日突然逆回転を始めたのだ。みんな不気味がりオカ研に調査を依頼して来た。  何の事はない。ただの電池切れだった。でもあの時は先輩と2人っきりで、暗い2階に上って電池交換をした。暗闇の中先輩に手を繋いでもらった甘酸っぱい思い出だ。 「じゃあ電池切れなんですか」 「そんな感じ」 「でも満明は成仏しちゃったし式神は電池切れ。これからこの神社はどうなっちゃうんですか?」  先輩は持ってきたスーツケースの中から桐で出来た真四角の箱を取り出した。 「これが新しい御神体だよ」  恭しく蓋を開けると中には鏡が入っていた。 「叔父さんの式神が入ってるんだ。まだ入れたてだから活きがいいよ」 「アルカリ乾電池ですか?」 「そう、それ!」  2人にしか分からない会話。マンガンじゃなくてアルカリの電池に交換した事を思い出し、2人で笑った。
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