新しい神様

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「本当に。僕にはとても出来ない。でも、これから修行に励んで出来るようにならなくちゃ」 「修行に……じゃあ」 「叔父さんの所へ戻るよ。もう僕の仕事は終わった」 「じゃあ先輩がこの神社に来たのって……」  式神の寿命が尽きる事は叔父さんには分かっていた。なので新たな御神体を安置する必要があった。しかし神社の人間でない他人が本殿に入るわけにはいかない。そこで先輩の登場! 桜親子と仲良くなり神社に入り込み御神体の交換をしようという筋書き。 「愛ちゃんが満明を成仏させてくれたからすんなり交換出来たよ。もし満明がいたら妨害凄かっただろうな。成仏させてくれてありがとう」 「いえ、役に立てたのなら良かったです。先輩、ミッションクリアですね」 「うん……」  ミッションクリアだと言うのに先輩は浮かない顔をしていた。本当は残りたいのだろうか。桜親子に情が移ってしまったのだろうか。 「あら神主さん、おはようございます」  声に振り向くとそこには老夫婦が仲良さそうに立っていた。 「まだ神主じゃありませんよ。見習いです」 「婆さんは忘れっぽくていかん。前にそう言ってたじゃないか」 「あら、そうだったかしら。でも未来の神主さんでしょ?」 「まあ……。お婆さん、今日は体の調子はいかがですか?」 「お陰様で。ここの神様にお参りに来るようになって元気になりました。ありがとうございます」 「それは良かったです」  老夫婦はぴょこんとお辞儀をして本殿の方へ歩いて行った。寄り添いつつ、仲睦まじく。
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