勇者 由美

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勇者 由美

「何? それであっさり先輩を帰しちゃったの?」  由美にお説教を食らっていた。 「そういう時はホームでポロリと涙を流すもんだよ。走り去る電車を追いかけるくらいしないでどうするの?」  由美は元気だった。最初の予備試験に合格し、次の論文試験を終えたところだそうだ。自信があるのか余裕しゃくしゃくだ。 「今度の合格発表はいつ?」 「12月だよ。で、それに合格すると1月に試験。だから今はちょっとだけ息抜き期間なの」 「ひ〜〜。試験に次ぐ試験。大学の勉強もあるのに。由美ってタフだなぁ」 「愛だって仕事と勉強と悪霊退治、その上片思い中。よくも4足もワラジ履けるわね」  その最後のヤツは余計なお世話だ。 「まあ何はともあれ、先輩が女の家から出られて良かったじゃん」 「うん」 「あとは社長だね」 「うん」  社長はいまだ陰陽師への恨みを抱いている。何とか仇を討とうと画策している。それを諦めさせれば一件落着なのだが。
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